頭のモヤ? 深刻な思考力低下? それブレインフォグですけど(要因編)

ブレインフォグの基礎知識

 

thinking

「ブレインフォグ」という言葉があります。
脳の働きが低下している状態を示す言葉として徐々に浸透してきているものの、まだまだ馴染みのある言葉ではありません。

ブレインフォグについては情報が不足しているのが現状です。
その「ブレインフォグ」の本質や要因について探ってみたいと思います。

 

関連記事:「ブレインフォグ」の対策

 

頭のモヤ? 深刻な思考力低下? それブレインフォグですけど(要因編)

1.ブレインフォグの定義

近年その深刻ゆえに対処法に注目が集まりつつあるのが「ブレインフォグ(Brain Fog)」。
ブレインフォグは別名「意識のモヤ」(Clouding of consciousness)と呼ばれています。

このブレインフォグ、世間ではしばしば加齢の一症状として片づけられがち。
「年をとったら急に記憶力が落ちたよ」
「新しいことを学ぶのがおっくうになってね・・・」

しかしです。
ブレインフォグはただの加齢による思考力低下ではないことがわかっています。
ブレインフォグは一時的な症状であるため、きちんと対処さえすれば年齢を重ねても思考力・記憶力が落ちることはないと考えられています[1]

 

ブレインフォグは以下の様に定義されています。

Clouding of consciousness, also known as brain fog or mental fog, is a term used in medicine denoting an abnormality in the regulation of the overall level of consciousness that is mild and less severe than a delirium.

出典:Wikipedia

 

要約すると、

「ブレインフォグとは医薬品の世界で使われる用語で”せん妄状態(精神錯乱)”よりは程度が軽いものの、意識レベルがいつもと異なっている状態」

ということ。

 

つまり・・・、ブレインフォグは程度の差こそあれ「精神錯乱」の状態に分類されるということです。
一般的な病気であれば病院を訪れてすぐに対処するのが当たり前ですが、ブレインフォグの場合はそれ自体が病気と認識されておらず、また対処法が知られていないだけに放置されがちなのが実態。

 

2.ブレインフォグの症状

「ブレインフォグ」の症状にはどのようなものがあるでしょうか?
「ブレインフォグ」の代表的な症状を以下に挙げてみます[2][3]

  • 慢性的に疲れていて、エネルギーレベルが低い
  • イライラする、または焦燥感がある(焦ってしまう)
  • 集中できない、気が散る
  • 物忘れがひどく、新しいことを覚えられない
  • うまくコミュニケーションがとれない
  • 頭痛がする

「自分自身がブレインフォグではないか?」と疑ってる方は、上記症状のいくつかは心当たるのではないでしょうか?
私自身も過去、上記症状のうち頭痛以外すべて当てはまる状況でした。

さらにこのような興味深いデータもあります。

 

表:ブレインフォグを訴える138人に該当した症状[4]

症状 当てはまる(%) 当てはまらない(%)
1 物忘れ 91 1
2 考えられない 89 1
3 集中できない 88 2
4 すっきりしない 88 3
5 言葉が出てこない 88 3
6 心の疲れ 86 2
7 思考の遅さ 86 2
8 虚無感 85 4
9 ぼーっとする 83 4
10 会話を理解できない 80 4

1位の「物忘れ」や2位の「考えられない」といった状態に加えて、10位の「会話を理解できない」といった声が特徴的です。
どうでしょう、心当たりはありませんか?

 

私の場合

私の実生活における症状の具体例はというと、

  • 言いたいことがうまく言葉にできず、表現力に乏しくなった(結果として「あれ」とか「それ」が増える)
  • 以前は身の回りのちょっとした問題について、対処法をすぐに思いついたのに、問題は認識していても、解決のための思考ができなくなった(解決する意欲もなくなる)
  • 決断に時間がかかるようになり、悶々としたままなかなか行動に踏み出せない(1,000円以下の買い物をするのに数日間考え込んだり、複数の選択肢から1つを選ぶことができない)
  • 本を読んでいても文章を目で追っているだけで内容が頭に入ってこない

といった症状でした。

 

3.ブレインフォグを感じたとき、身体では何が起こっているのか?

3-1.神経伝達物質に問題が起こる

ブレインフォグを引き起こす生活習慣上の要因は、正しい睡眠が取れていないこと、偏った栄養摂取、日々のストレスにあるとされます[5]

そんな生活習慣や環境をきっかけとして、ブレインフォグが発生してしまうのは、結局は神経伝達物質が正しく分泌されなくなるからです。

  • アセチルコリン
  • ノルアドレナリン
  • ドーパミン
  • セロトニン
  • コルチゾール

これらの神経伝達物質がバランスよく分泌されることによってはじめて、私たちの幸福感、快感、意欲、落着きなどが適切にコントロールされています。
ブレインフォグの場合は特に、コルチゾールというストレスホルモンの過剰な分泌が要因であることが多いと考えられています[6]

 

コルチゾールは消化吸収や新陳代謝などの「身体のメンテナンス機能」を犠牲とする代わりに、一時的な血圧や心拍数の上昇を促して、危機的な状況に対処するストレスホルモンです。

 

コルチゾールの過剰分泌状態を例えるなら、「飲まず食わずのサバイバル状態を続けている」興奮状態
一時的に能力が底上げされますが、長期的には体が持たず、常に低いエネルギー状態に悩まされることとなります。

またコルチゾールには海馬を萎縮させる効果があり、コルチゾールの分泌がおさえられたとしても脳の回復には時間がかかるとの見方が一般的です[7][8]

 

3-2.軽視され続ける「炎症」【重要】

ブレインフォグを引き起こすもう一つの理由として「炎症」があります。

炎症は喉から筋肉まであらゆる場所に発生し、多くの病気の根本的な原因となることは広く知られていますが、特に免疫系に炎症が起きることによってブレインフォグを引き起こすことが報告されています[9]

 

一般的に日本では炎症を軽視する傾向があります。
「放っておけば治るよ」という言葉もよく聞きます。

炎症が自然治癒することに間違いはありませんが、それは程度が軽いか、慢性化してない場合に限ります。
英語では炎症のことを”Inflammation”といい、このInflammationという単語を検索いただけば分かる通り、炎症はあらゆる病気に関わる根本的な原因の一つだとみなされています。

 

炎症は酸化ストレスとセットで発生します。
酸化ストレスとは、抗酸化物質が不足して活性酸素が体内で害を及ぼしている状態です。

炎症や酸化ストレスを脳が感知すると、視床下部から分泌されるオレキシンという物質が制限されるようになります。
オレキシンが制限されると私たちは疲労を感じると考えられています[10]

さらに、視床下部が炎症を起こしたり酸化ストレスを受けることを私たちはブレインフォグとして感じとっているようです。

 

3-3.アルツハイマーの兆候

神経に生じる炎症はパーキンソン病やアルツハイマー病の要因ともなることが知られていて、それらの重篤な疾病とブレインフォグとの間に同様のメカニズムが存在することが知られています。

したがってブレインフォグはパーキンソン病、アルツハイマー病などの重篤な疾病の前兆であるケースも存在するということになります。

 

3-4.アセトアルデヒドの影響

alcohol

アルコール(エタノール)の中間代謝物であるアセトアルデヒドがブレインフォグの原因となる場合があります(どうやら私のケースではこのアセトアルデヒドがブレインフォグの原因だったようです)。
アセトアルデヒドは私たちにとって有害以外のなにものでもありません。
ニューロトキシンと呼ばれ、神経系にダメージを及ぼし、思考能力や感情の起伏を低下させます。

アセトアルデヒドは、アルコールのとりすぎなどでアセトアルデヒドが体内の長くとどまるケース以外にも、カンジダ菌の存在によってもたらされるケースがあります。
カンジダ菌(酵母)が体内の糖を発酵させ体内でアルコールを生み出すからです。
お酒を飲んでないのでなんとなく頭がぼーっとするのはこれが原因です。

もっというと、腸内環境がブレインフォグの要因となりうるわけです。

参考記事:カンジダ菌とアセトアルデヒドについて

 

3-5.その他の要因

ブレインフォグは、しばしば小麦特有のたんぱく質であるグルテンに対するアレルギー症状としても発生することが最近の調査で分かってきました[11]
さらに、グルテンと同じく小麦などに含まれる「レクチン[12]」にも不耐症をもつ人がいることがわかり、ブレインフォグの要因となっていると推測されています。

また「副腎疲労(副腎機能不全)」と呼ばれる、副腎の機能が低下している状態からもブレインフォグの症状が発生します。
副腎疲労もコルチゾールの過剰分泌が主要因と考えられていますので、ブレインフォグと同時に発生する病気と考えても良いかもしれません[13]

さらにADHDとの関連性についても研究が続いており、ブレインフォグとADHDの症状の間にかなりの似通ったものがあることも分かってきています[14]

 

まとめ

ブレインフォグの症状と要因について参考となりましたでしょうか。

ブレインフォグは加齢の症状ではないことはぜひ知っておいていただきたいです。
また要因については酸化ストレスとアセトアルデヒドが主となって研究が進んでおり、抗酸化対策や腸内環境改善が有効なブレインフォグ対処法になると思います。

ブレインフォグの対処方法については、以下の記事にまとめています。
関連記事 http://fukujin.tokyo/brain-fog-remedy/

 

ブレインフォグの原因ともなりうる「副腎疲労」の解消方法については、こちらで解説しています。
関連記事 http://fukujin.tokyo/adrenal-fatigue-recovery/

コメント

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